なぜ星野リゾートは赤字旅館を再生できたのか?
企業ビジョンを「リゾート運営の達人」と設定し、 所有を本業とせず、運営会社を目指すという企業将来像を発表。 お客様のご満足を重視しながらも十分な利益を確保できる 運営の仕組みづくりに取り組んでいる星野リゾート。
2005年、星野リゾートは伊東温泉「湯の宿 いづみ荘」の 再生事業に乗り出します。 いづみ荘は1912年創業の老舗ながら、 40億円の負債を抱えて経営難に陥っていました。 星野社長は行き詰まったリゾート施設や旅館の再建にあたるとき、 徹底したマーケティングリサーチを行い、 それをもとに、再生のための「コンセプト」を立てます。
どういう人たちをメインターゲットにして、 どんなリゾートを目指すのかを明確に示す「道しるべ」です。 このコンセプト作りに正解はないと星野社長は言っています。 大事なのは「共感」。 現場で実際に接客をする社員たちが、 共感できるコンセプトを作り上げることが、 リゾート再建の鍵だと考えているそうです。
社員達が議論を尽くした末にコンセプトが決定すると、 そのコンセプトに沿って、具体的にどんなことをするかを、 現場の社員達が考え、実行に移します。 いづみ荘では、根強くリピートしてくれる顧客層である 「熟年女性」が旅行などイベントの決定権を握っていることに 問題解決の糸口を見出し、この層を圧倒的に満足させる 「熟年女性のマルチオケージョン(いつ誰と来ても満足できる)温泉旅館」 というコンセプトに決定しました。
コンセプトに合わせて料理や接客サービスなどを変え、 旅館のオペレーションを改革したところ、 次の年には客室稼働率が前年比1割アップ。 こうして再生の道筋がつきました。